500t吊 押航式全旋回起重機船「 肥前 500 」
はじめに
(株)肥前建設は創業以来、日々変化する海洋工事に対応し歩みを進めてきた。東日本大震災以降、福島第一原発港内及び被災地域の港湾災害復旧工事に携わってきた。今後も大きな地震が各地で発生することが十分に考えられ、復旧工事の際には率先して出動できるよう見越した。
また、世の中が大型化になっていることも視野に入れ、今回弊社最大級の起重機船を導入した。最大の特徴は、弊社が特許を取得している水中捨石均し
装置や同工法をフルに活用でき、騒音や大気汚染等の環境面でも最新の環境性能を達成した国際大気汚染防止原動機を、本船・押船ともに完備していることである。また、グラブ浚渫船施工管理システムを採用し、GPSやクレーンからの信号により施工位置や深度を自動記録し、モニターで確認でき施工精度の向上につなげた。
「肥前500」の特徴
主要諸元
船体全長: 73.00m
船体幅: 24.00m
船体深さ: 4.80m
船倉部: 35.0m×21.6m×1.5m=1134m3
積載重量: 1,700t
総トン数: 2,888t
クレーン: SKK-50012GDT-K
スパッド: 1300 ㎜角 L=28m×2 基
砕岩棒: 30t
押船(第五貴丸)
19 トン、2276PS
一般配置図
環境性能達成
設置するすべての発電機は、国際海事機構(IMO)排ガス規制に対応した舶用ディーゼルエンジンを採用。さらに、低騒音マフラ・機関室内への吸音材施工により、騒音対策に配慮した。
主発電機: 265kw/1200rpm 1 基
クレーン部: 1004kw/1800rpm 1 基
ポンプジェット装置:262kw/2471rpm 2 基
押船(第五貴丸): 837kw/1450rpm 2 基
総トン数: 2,888t
クレーン: SKK-50012GDT-K
スパッド: 1300 ㎜角 L=28m×2 基
砕岩棒: 30t
押船(第五貴丸)
19 トン、2276PS
主発電機
ポンプジェットスラスター
本船は、ポンプジェットスラスターを船首両舷に 2 基設置し、船体の離接舷・移動・船首位置のキープ等その機能をフルに活用できる。
また、船位システムと合わせて使用することで、パソコン画面上での構造物との距離を確認できる。
機種:SPJ57RD 公称スラスト 約 2.0 トン
操作:3F操作室、押船内及び、船首部にてリモコン操作
ピロローラー式スパッド
船体固定装置として船尾両舷に、1300 ㎜角、28mのスパッドを 2 基装備しており、投錨できない現場状況に迅速に対応できる。
スパッド:1300 ㎜ 28m 2 基
巻取能力:60/30T×2/4m/min
操作:機側、遠隔操作(3F)
操作ウィンチ、ウィンドラス
型式:横復胴型
巻取能力:15/7.5T×10/20m/rpm
操作;機側、遠隔操作(3F)
巻取量:60φ×300m(ロープ)
巻取量:34φ×300m(ワイヤー)
ストックレスアンカー 3.5 トン×4 基
ストックアンカー 3.5 トン×2 基
アンカーチェーン 38 ㎜×250m×4 式
起重機部
クレーン仕様
形式 | SKK-50012GDT-K |
---|---|
エンジン | 三菱重工業株式会社 S12R-T2MPTAW 1104kW / 1800rpm |
最大吊上能力 | 旋回縦吊 500t*11.5m(25mジブ時) 全旋回吊 400t*10.6m(25mジブ時) |
フックブロック | 主巻 500t, 150t, 50t 第一補巻 45t, 13t 第二補巻 5t |
ジブ長さ | 主巻 25m, 32.2m, 35.8m, 39.4m, 43m, 46.6m, 53.1m 61m |
バケット直巻能力 | 50t |
砕岩棒重量 | 35t以下 |
浚渫可能深度 | 水面下鉛直最大40m(水面上鉛直最大6m) |
旋回速度 | 1.5rpm |
多目的クレーン
予備フック(油圧駆動)、第一補巻 45 トンフック(油圧駆動)、第二補巻 5 トンフック(油圧駆動)、直巻能力 50 トン支持・開閉ワイヤー索
(トルクコンバータ駆動)を常備し、港湾工事において効率的な作業が可能。
バケット作業
ドレッジャーバケット 6m3
オレンジバケット 10m3
効率的な浚渫作業を可能にした装置。
- ディスクブレーキ水平堀装置
- 砕岩自動ブレーキ装置
- 沈み掴み装置
- 定寸堀装置
- 水平堀任意作動装置
- 深度補正装置(1 ㎝制御) 振れ止め装置
起重機作業
① 主巻専用ドラム(直巻 18 トン×60m/min、ディスクブレーキ付き)
② 第一補巻専用ドラム(直巻 15 トン×45m/min)
③ 第二補巻専用ドラム(直巻 5 トン×30m/min)
④ フックポケット格納(主巻 150 トンフック、第一補巻 45 トンフック)
施工管理
(位置精度:±5 ㎝程度、方位精度:0.3°程度)
クレーンから、ジブ角度・旋回角度・バケット深度・バケット開閉信号を取り込み、深度毎に掘削軌跡を色分けして自動的に記録する。また、起重機作業においても、漁礁等の据付軌跡を記録することが可能。
安全対策
航海中の前方確認や、さまざまな作業現場に対応すべく 4 台の監視カメラを搭載。
① 船首監視カメラ(パン・チルト、ズーム付)
② ジブトップ監視カメラ
③ フックポケット監視カメラ
④ ドラム監視カメラ
その他、跳ね上げ式階段、昼間障害標識(ジブ黄赤×白塗装)、航空障害灯を備える。
ギャラリー
肥前500
あとがき
肥前500は、平成 28 年 8 月に竣工し、同年 11 月に九州地方整備局唐津港湾事務所発注の浚渫工事にて初就業を迎えました。今後導入されるICTの分野においても、マルチビームソナーをいち早く採用、3次元データの活用を始めております。変化する社会情勢に機微に対応し、港湾整備・維持・開発工事に寄与できると確信しております。
本船建造にあたり、富士海事工業株式会社、株式会社SKKならびに日本造船鉄工株式会社をはじめとしましてご指導、ご協力をいただいた関係各位様にこの場をお借りし心より御礼申し上げます。