【公開番号】特開2010-168730(P2010-168730A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
特許庁サイト
【発明の名称】水中捨石均し装置
【国際特許分類】
E02D 15/10 (2006.01)
【FI】
E02D 15/10
【要約】
【課題】水中に投入した捨石を良好に押圧して均すことができる水中捨石均し装置及び水中捨石均し工法を提供すること。
【解決手段】本発明では、台座に支柱を立設した支持台と、前記支柱に摺動自在に装着した錘本体とで錘を構成し、支持台の支柱に沿って錘本体を落下させることで支持台の台座で水中に投入した捨石を押圧していく水中捨石均し工法に用いられる水中捨石均し装置において、錘本体が支柱に対して回転するのを防止するための回転防止機構を錘に設けることにした。特に、前記回転防止機構は、支持台に設けた複数本の支柱と、複数本の支柱を挿通させるために錘本体に設けた複数個の挿通孔とで構成することにした。また、前記複数本の支柱の中途部間に連結体を配設することにした。
【特許請求の範囲】
台座に支柱を立設した支持台と、前記支柱に摺動自在に装着した錘本体とで錘を構成し、支持台の支柱に沿って錘本体を落下させることで支持台の台座で水中に投入した捨石を押圧していく水中捨石均し工法に用いられる水中捨石均し装置において、
錘本体が支柱に対して回転するのを防止するための回転防止機構を錘に設けたことを特徴とする水中捨石均し装置。
前記回転防止機構は、支持台に設けた複数本の支柱と、複数本の支柱を挿通させるために錘本体に設けた複数個の挿通孔とで構成したことを特徴とする請求項1に記載の水中捨石均し装置。
前記複数本の支柱の中途部間に連結体を配設したことを特徴とする請求項2に記載の水中捨石均し装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
本発明は、水中に投入した捨石を錘で押圧して均していく水中捨石均し工法に用いられる水中捨石均し装置に関するものである。
【背景技術】
従来より、水中にケーソンなどの構造物を設置する際には、水中の地盤に断面略台形状の基礎を形成し、その基礎でケーソンなどの構造物を支持するようにしていた。
そして、水中の地盤に形成する基礎としては、水中に投入した捨石を錘で押圧して均し固める水中捨石均し工法が古くから用いられていた(たとえば、特許文献1参照。)。
この水中捨石均し工法では、起重機船のクレーンで錘を昇降可能に吊下げた水中捨石均し装置を用いて基礎を形成するようにしており、まず、水中の所定領域に捨石を投入することで水中に断面略台形状の捨石基礎を形成し、その後、潜水士の指示により起重機船のクレーンで錘を水中の所定位置の捨石に向けて自由落下させることで捨石基礎を均一に押圧して所定高さの基礎を形成するようにしていた。
しかしながら、上記従来の水中捨石均し装置では、水中で錘を自由落下させるために、錘が水の抵抗を受けながら落下することになり、水の抵抗によって錘が直下方よりもずれた位置に落下してしまい、所定位置の捨石を良好に押圧することができないおそれがあった。
そこで、本発明者は、捨石を押圧するための台座に支柱を立設した支持台と、支柱に摺動自在に装着した錘本体とで錘を構成し、クレーンの主ワイヤーに錘本体を吊設するとともに、前記クレーンの副ワイヤーに支持台を吊設した水中捨石均し装置を開発した(たとえば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開2006−104835号公報
【特許文献2】特開2008−179951号公報
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の水中捨石均し装置では、支持台の支柱に沿って錘本体を落下させることができるために、水の抵抗によるずれを生じさせることなく支持台の台座で所定位置の捨石を確実に押圧することができるといった効果が得られるが、一本の支柱に沿って錘本体を落下させる場合には、支持台に対して錘本体が一本の支柱を軸として水平方向に回転してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1に係る本発明では、台座に支柱を立設した支持台と、前記支柱に摺動自在に装着した錘本体とで錘を構成し、支持台の支柱に沿って錘本体を落下させることで支持台の台座で水中に投入した捨石を押圧していく水中捨石均し工法に用いられる水中捨石均し装置において、錘本体が支柱に対して回転するのを防止するための回転防止機構を錘に設けることにした。
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記回転防止機構は、支持台に設けた複数本の支柱と、複数本の支柱を挿通させるために錘本体に設けた複数個の挿通孔とで構成することにした。
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項2に係る本発明において、前記複数本の支柱の中途部間に連結体を配設することにした。
【発明の効果】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
すなわち、本発明では、錘本体が支柱に対して回転するのを防止するための回転防止機構を錘に設けることにしているために、錘本体を支持台の台座に向けて回転することなく落下させることができ、錘本体によって台座の所定位置を押圧することになり、捨石を良好に押圧することができる。
特に、支持台に設けた複数本の支柱と、複数本の支柱を挿通させるために錘本体に設けた複数個の挿通孔とで回転防止機構を構成することにした場合には、錘の構成を簡素化することができ、安価で製造容易な錘とすることができる。
また、複数本の支柱の中途部間に連結体を配設することにした場合には、錘本体が台座に衝突した衝撃で支柱が振動し破損してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水中捨石均し装置を示す側面図。
【図2】同拡大側面図。
【図3】支持台を示す斜視図。
【図4】錘本体を示す斜視図(a)、対角断面図(b)。
【図5】水中捨石均し工法(捨石投入工程)を示す説明図。
【図6】水中捨石均し工法(荒均し工程)を示す説明図。
【図7】水中捨石均し工法(本均し工程)を示す説明図。
【図8】水中捨石均し装置の動作(本均し工程)を示す側面説明図。
【図9】水中捨石均し工法(完成状態)を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
以下に、本発明に係る水中捨石均し装置及び同装置を用いた水中捨石均し工法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
まず、水中捨石均し装置の構成について説明すると、図1〜図4に示すように、水中捨石均し装置1は、起重機船2のクレーン3に昇降自在に吊下げた錘4で構成しており、この錘4によって予め水中5の所定位置に投入した捨石6を押圧する装置となっている。
錘4は、起重機船2のクレーン3の副ワイヤー7に昇降自在に吊下げられた支持台8と、起重機船2のクレーン3の主ワイヤー9に昇降自在に吊下げられた錘本体10とで構成している。ここで、錘4は、起重機船2のクレーン3にそれぞれ別個に昇降自在に吊下げられた支持台8と錘本体10とで構成していればよく、主ワイヤー9や副ワイヤー7は別個のワイヤーであることを便宜的に示しているに過ぎない。
支持台8は、捨石6を押圧するための矩形(ここでは、正方形)板状の台座11の上面角部側に円筒状の4本の支柱12を垂直に取付け、4本の支柱12の上端部にクレーン3の副ワイヤー7で吊下げるための吊下具13を取付けている。この支持台8は、台座11の下面(底面)を水平に形成している。
また、支持台8は、4本の支柱12の中途部間にX字状の連結体14を上下2箇所取付けることで4本の支柱12の中途部間を連結している。これにより4本の支柱12の強度を全体で増大させており、各支柱12が振動で破断してしまうのを防止している。
さらに、支持台8は、台座11を水中5の所定位置の捨石6の上部に載置した状態で支柱12の上端が水面15よりも上方に位置する長さに支柱12を形成している(図1参照。)。なお、支柱12は、上下に複数本連結して形成してもよい。また、支柱12の上端部分に目印となるスケールを形成しておき、外部から押圧する領域の高さを計測できるようにしてもよい。
錘本体10は、矩形(ここでは、正方形)箱型状の押圧体16と、押圧体16の上部に取付けた櫓17とで構成している。
押圧体16は、4箇所の角部側に支持台8の支柱12を挿通させるために下端から上端に貫通させた水平断面円形状の挿通孔18を形成するとともに、中央部に下端から上端に貫通させた1個の水平断面円形状の水抜孔19を形成している。
櫓17は、押圧体16の上面角部側に4本の柱20を垂直に取付けるとともに、4本の柱20の間に水平状の横桿21と傾斜状の傾斜桿22とを取付けて櫓状に形成し、4本の柱20の上端部に支持体23を取付け、各支持体23にワイヤー24を介してクレーン3の主ワイヤー9に吊下げるための吊下具25を取付けている。
この錘本体10は、押圧体16の挿通孔18を支持台8の支柱12に挿通させることで、支持台8の支柱12に上下摺動自在に装着している。
以上に説明したように、上記水中捨石均し装置1では、支持台8に複数本(ここでは、4本)の支柱12を設けるとともに、4本の支柱12を挿通させるために錘本体10に複数個(ここでは、4個)の挿通孔18を設けており、これらによって錘本体10が支柱12(支持台8)に対して水平方向に回転してしまうのを防止することができる回転防止機構26を構成している。
次に、上記水中捨石均し装置1を用いた水中捨石均し工法の構成について説明する。この水中捨石均し工法は、水中5に多量の捨石6で所定幅W、所定高さH、所定長さの略台形状の基礎27(図9参照。)を形成するための工法であり、水中5に捨石6を略台形状に
投入して所定高さHよりも高い捨石基礎28(図5参照。)を形成し、この捨石基礎28の上端面を水中捨石均し装置1を用いて均等に押圧することで所定高さHの基礎27を形成するものである。なお、以下の説明では、既存の堤防29の下端部に基礎27を連設する場合について説明する。
この水中捨石均し工法は、概略、水中5に捨石6を投入して捨石基礎28を形成する捨石投入工程と、捨石基礎28の上端部を荒く均す荒均し工程と、捨石基礎28の上端部を均して所定幅Wかつ所定高さHにする本均し工程とで順に構成している。なお、必要に応じて捨石基礎28の縁部の法面の捨石6を押圧する法面均し工程が追加されることもある。
まず、捨石投入工程では、図5に示すように、水底30に目印となる指示棒31を堤防29から所定幅Wで長さ方向に間隔をあけて立設し、潜水士の指示により指示棒31で示される領域(堤防29の端縁と指示棒31との間の領域)の内側にガット船を用いて捨石6を順次投入し、水底30に捨石6を積み上げて所定高さHよりもh1ほど高い捨石基礎28を形成する。なお、捨石投入工程では、指示棒31を目印として所定幅Wの内側に捨石6を投入するために、縁部の捨石6が自然に落下して、上端の縁部の間隔W1が所定幅Wよりも狭く、下端の縁部の間隔W2が所定幅Wよりも広く、所定高さHよりも高い略台形状の捨石基礎28が形成される。
次に、荒均し工程では、図6に示すように、捨石基礎28の上端部の捨石6をクレーン3や潜水士によって排除して、捨石基礎28の上端が概ね平坦で高さが所定高さHよりもh2(h2<h1。)ほど高い捨石基礎28を形成する。なお、荒均し工程では、捨石基礎28の上端の縁部の捨石6も排除して、上端の縁部の間隔W3が所定幅Wよりも狭い捨石基礎28が形成される。
次に、本均し工程では、図7及び図8に示すように、潜水士の指示により指示棒31で示される領域の内側において水中捨石均し装置1の錘4を用いて捨石基礎28の上部の捨石6を順に押圧していき、所定高さHの捨石基礎28を形成する。
この本均し工程では、上記水中捨石均し装置1を用いており、次のようにして錘4を用いて捨石6を押圧するようにしている。
まず、潜水士の指示により起重機船2のクレーン3で錘4を水中5の所定の捨石6の上部に載置する(図8(a)参照。)。
次に、支持台8を吊下げる副ワイヤー7の張力を緩和するとともに、錘本体10を吊下げる主ワイヤー9を巻き上げて錘本体10を支柱12に沿って上方の所定高さまで上昇させる(図8(b)参照。)。なお、上昇させる高さは、捨石6の押圧量に応じて適宜調整する。また、副ワイヤー7は、支持台8が水中5で転倒しない程度(具体的には、副ワイヤー7の撓み量が支柱12の高さよりも十分に短い長さ(たとえば、1/10程度の長さ))に張力を緩和する。
次に、錘本体10を吊下げる主ワイヤー9の張力を一気に緩和して錘本体10を支柱12に沿って直下方の台座11に向けて落下させる(図8(c)参照。)。
これにより、錘本体10が台座11に落下し衝突して、台座11の底面によって捨石6を押圧することができる。このときに、水中捨石均し装置1は、錘本体10が支柱12に対して回転するのを防止するための回転防止機構26を錘4に設けているために、錘本体10を支持台8の台座11に向けて水平方向に回転することなく円滑に真下に落下させることができる。
この本均し工程では、所定幅Wの範囲内において捨石基礎28の基端部(堤防29と隣接する部分)から縁部へ向けて順次捨石6を押圧していくことで、捨石基礎28の上端面を良好な平坦面に仕上げていく。これにより、本均し工程では、図9に示すように、捨石基礎28の下端の縁部の間隔W4が若干広がり、上端の縁部が所定幅Wで高さが所定高さHの基礎27が形成される。
以上に説明したように、上記水中捨石均し工法で用いる水中捨石均し装置1では、捨石6を押圧するための台座11に支柱12を立設した支持台8と、支柱12に摺動自在に装着した錘本体10とで錘4を構成しているために、支持台8の台座11を所定の捨石6の上部に載置した後に錘本体10を台座11に向けて落下させることによって、支持台8の支柱12に沿って錘本体10を落下させることができ、水の抵抗によるずれを生じさせることなく所定の捨石6を確実に押圧することができる。
また、支柱12に沿って錘本体10を落下させるために、水中5の潮流の影響を受けることなく錘本体10を支柱12に沿って直下方に落下させることができて所定の捨石6を確実に押圧することができる。
また、直接的には台座11によって捨石6を押圧することになるために、台座11を設置した領域を偏って押圧することなく均等に押圧することができ、捨石6を平坦に押圧することができる。
しかも、支持台8の台座11によって捨石6を押圧することになるために、錘本体10の落下時に生じる水圧が捨石6に直接作用することがなく、水圧によって小径の捨石6や捨石6の押圧時に捨石6が割れて生じる小片が周囲に散乱してしまうのを未然に防止することができ、水の濁りの発生を抑えて潜水士の視界を良好に確保でき、作業性を向上させることができる。
特に、上記水中捨石均し装置1では、錘本体10が支柱12に対して回転するのを防止するための回転防止機構26を錘4に設けた構成となっているために、錘本体10を支持台8の台座11に向けて水平方向に回転することなく円滑に真下に落下させることができるので、錘本体10によって台座11の所定位置を正確に押圧することになり、捨石6を安全かつ良好に押圧することができる。
また、上記水中捨石均し装置1では、支持台8に設けた複数本の支柱12と、複数本の支柱12を挿通させるために錘本体10に設けた複数個の挿通孔18とで回転防止機構26を構成しているために、錘4の構成を複雑化させることなく簡素化することができ、安価で製造容易な錘4とすることができる。
また、上記水中捨石均し装置1では、複数本の支柱12の中途部間に連結体14を配設することにしているために、錘本体10が台座11に衝突した衝撃で支柱12が振動し破損してしまうのを防止することができる。
また、上記水中捨石均し装置1では、錘本体10に下端から上端に貫通する水抜孔19を形成しているために、錘本体10の落下時に錘本体10の直下方の水を水抜孔19から排除することができ、落下時に錘本体10が受ける水の抵抗を低減して錘本体10の落下によって捨石6を強固に押圧することができる。
特に、上記水中捨石均し装置1では、矩形状の台座11の角部側に支柱12を配置するとともに、矩形状の押圧体16の角部側に挿通孔18を配置し、さらに、押圧体16の中央部に水抜孔19を形成しているために、錘本体10の全体の重量が水抜孔19を中心に均等化されて全体
的にバランスが良くなることで落下時に錘本体10の水平方向の回転を抑制することができる。
また、上記水中捨石均し装置1では、錘本体10の中央部に水抜孔19を形成するとともに、水抜孔19の周囲に支柱12や櫓17を配置しているために、錘本体10の落下時に水抜孔19を通過した水が支柱12や櫓17に沿って上方に向けて流れることになり、錘本体10の落下時に水抜孔19を通過した水が直ちに周囲に流れ出すのを防止することができ、作業の安全性を向上させることができる。